子供のトレーニングを正しくサポートする方法

 「たくましい子に育って欲しい」「将来はプロ選手になってほしい!」そんな期待を子に持つ親なら、このことは大いにあり得ることでしょう。しかしながら子供にトレーニングさせる際には、注意すべき点がいくつかあります。

子供に筋力トレーニングをさせるか否か、この問いに対する答えを知るためには、成長期の身体に関する知識をあらかじめ知っておくことが不可欠です。 

 私たちクロススポーツクラブの指導者も、特に小学生は指導が難しいです。体の成長の度合いはもちろん、1年生から6年生までの年齢の違いも大いに難しい点の一つです。

“子供のトレーニングは成長に任せる”

 子供たちはその環境における遊びや活動を通じて、必要な身体能力を獲得してゆくものです。もし、「集団の中でいちばんになりたい」という気持ちを持つ子供であれば、自らその競技に合った運動能力をさらに追求することでしょう。ですが、ただ楽しめれば、ただ遊びとしてできればと、それで十分と思っている子供も少なくありません。

 「楽しい」という感覚は、チャレンジと成功体験のバランスの結果として生まれるものです。子供たちは同世代の仲間との切磋琢磨によって、未知の喜びや驚きを体験し、スポーツの楽しさを学び取ってゆくものです。

 スポーツを競技として極めようとする大人たちの取り組みは、子供たちの取り組みとは事情が異なります。ある特定の競技に求められる技能を高めるために、特出した、専門性の高いキャンプに参加したり、競技選手になるための条件を満たすことに意識を割いたりと、ひとつの目標に向けて努力を積み重ねます。これを子供に強いた場合、一点に絞りこんだ目標に集中し過ぎてしまえば、成長期の子供の身体能力の成長は偏ったものになりますし、スポーツ全般に対する子供たちの関心を低下させることにもつながりかねません。 

 結果として、スポーツやフィットネスに魅力を覚えない子供たちが増え、身体能力を育て損なってしまう状況になったとしたら、それはとても残念なことになります。

幸いなことに、「LTAD(=ロング・ターム・アスレチック・デベロップメント)」という、子供たちに向けたスポーツの取り組みがあります。

 身体を動かすことの肉体的、精神的な喜びを子供たちに知ってもらい、そして、スポーツに対する関心を獲得してもらうという、広い視野を備えた理念に基づいた取り組みです。LTADは、あらゆる世代の子供から大人までを対象とし、身体的な、精神的な、そして心理的な健康を育んでいこうという試みです。

 この「LTAD」は、成長期における身体育成に関する、5つの大きな誤解を改めるものです。筋力トレーニングが成長を促進する。幼少期において、特定のスポーツで良いパフォーマンスを行う子供には、競技選手としての才能がある。プロの行なうトレーニングメニューは、子供にも有効である。スポーツ選手として大成するためには、早期における成功が不可欠である。運動をすればするだけ良い結果を得ることができる。

 身体能力の技術的向上および幼児教育において、運動は極めて有効です。ただし、子供に筋力トレーニングを課すことについては、その成長にとってネガティブな側面もあることが指摘されています。子供に対し、負荷のかかるトレーニングを課すなという訳ではありませんが、ボディウエイト、フリーウエイト、そしてバンド/チューブその他の器具を用いることで生じる様々な種類の負荷に、まずは馴れることから始めるべきです。

 子供たちがスポーツに興味を持つ年ごろになれば、「抵抗トレーニング(筋肉に負荷を与えるトレーニング)」を開始しても問題はありません。  

 大抵は6歳から8歳に、その時期を迎えます。   

 競技に求められる正しい動作を体得するためには、結局のところ、筋力が求められます。その観点から、適切な抵抗トレーニングを取り入れることは理に適っていると言えます。「プレイするために身体を鍛えるのであって、身体を鍛えるためにプレイするのではない」という言葉は、まさに正しいのです。  

 そのうえで、「ウエイトを用いるトレーニングよりも、まずは本人の体重を活かしたボディウエイトの筋トレから取り組むべきである」とするプログラムには注意が必要です。  

 例えば、肥満傾向にある子供たちには、まず適度なウエイトを用いたトレーニングなどで成功体験を積ませるべきであり、いきなり本人の重量を活かしたトレーニングをさせるべきではありません。お子さんがどのようなトレーニングやスポーツ競技を楽しんで行うのかを見極めることが先決です。  

 例えわが子が、同世代の他の子供たちより力持ちであったり、特定のスポーツ競技で優れていたとしても、別格扱いすべきではありません。多くの場合、青少年の興味の対象は移ろいやすいものですし、また、子供たちはいくつものトレーニングや競技を体験しながら成長してゆく必要があります。

 同世代の子供たちよりも優れたパフォーマンスを見せる子供も確かにいますが、成長が早いだけかもしれません。得意だからと言ってオーバーワークになりすぎていないか、注意して見守る必要があります。

 成長の遅い子供たちもいますが、彼等については運動不足になっていないかを気に掛ける必要があります。「PHV(ピーク・ハイト・ベロシティ=最大身長成長速度)」の計算を用いれば、両親の身長と児童の身長および年齢のバランスから、子供たちの発育速度を割り出すことが可能です。

 クロスポーツクラブの指導でも重要しているのは、楽しく取り組むこと。成功体験を多く積み、これからの逆境に前向きに立ち向かえるように指導しています。最近は習い事も多くなったり、公園などで遊ぶ機会も減ってきいます。そのため、名古屋オーシャン野球教室のスクールでも習い事の併用を認めていますし、野球だけじゃない経験も出来るように心がけています。

“子供たちは遊んで育つ”

 子供たちを特定のスポーツ競技に縛りつけてしまうのは好ましいことではありません。「幼いうちに競技を固定しても、先々の成功の可能性を高めることには繋がらない」ということは広く知られています。実際のところ、早期に競技を限定してしまうことが、ケガや故障、燃え尽きやストレスの原因になるとされています。  

 子供たちにさまざまなスポーツを体験させることは、彼らが自分に適した競技を自ら見つけ出すための機会を与えることにつながります。多様なスポーツを行うことで身体能力や技術的な幅を獲得することになり、そのように培われた能力が、その後の人生を活発で活動的なものにしてゆくのです。それが「フィジカル・リテラシー」と呼ばれるコンセプトです。

 「フィジカル・リテラシー」の高い子供たちは、グラウンド、陸上トラック、スケートリンク、水中などさまざまな運動の場において、自信をもって効果的な動作を行うことが可能になります。「誰もが同じことを同じようにできるはずだ」、などというコンセプトを子供たちに押しつけないように心がけることも肝心です。例えば、すべての子供たちに高等数学を理解しろと言っても無理です。

 スポーツ競技における練習や、取り組むべきフィットネスの内容については、個々の能力に見合ったものを取り入れるべきです。子供たちひとりひとりの成長の度合いや、興味の大小に照らし合わせたプログラムであるべきです。  

 つまり、大学生選手のための練習を、高校生に課すことは適切ではありません。「筋力トレーニングを行うのなら、その人に適した重量のウエイトを用いたワークアウトを行うべきである」、というのと一緒です。  

 例えば、運転技術や交通ルール、安全性や危険性についての知識を持たない子供たちにクルマを運転させることなど、ありえません。同じように、まだそのレベルに達していない子供たちに課すべきではないトレーニングというものがあります。

 「倒れるまで走り続けろ」というマインドセットは、その典型です。 

 子供たちと共に汗を流すのは素晴らしいですが、心ない指導からは、いかなる価値も結果も成果も生まれません!!「オーバーワークによる弊害は、主にそのようなマインドセットから引き起こされるもの」であると覚えておきましょう。

 ある程度厳しい練習をする事は大事な事だと私は思っています。しかし、子供にその気がなかったり、バランスを間違えると大変な事になってしまいます。その為には、一人一人の子供をしっかりみて、指導するのがクロススポーツクラブの指導者がするべきことでしょう。

“身体を動かせば良いという訳ではありません”

 成長期におけるスポーツやフィットネスについての理解を深めることなく、子供たちに運動を強いる大人はしばしば思うような結果が伴わないことに失望し、とにかく訓練し続けることを強要することがあります。もちろん、これは間違っています。  

 成長期のアスリートにとって重要なのは、「とにかく身体を動かす」ということではありません。もちろん、十分な運動を行うことは必要ではあります。ただ、それよりも肝心なことは、楽しんでプレイすることの大切さを子供たちに十分理解してもらうことが先決です。それは喜びが伴ってこそ、上達が見込めるからです。  

 大人の介入の度合いに応じ、3段階のタイプの異なる“プレイ”が生まれます。まずは競技スポーツのように、大人によってきっちりと定められたルールに基づいて行われるべきケースです。子供たちを、まるで小さな大人のように扱うことへとつながり、それが青少年スポーツの抱えるトラブルの原因となることもあります。  

 次に、大人による介入の比較的少ないケース。大枠のルールは大人によって定められているものの、その運用については子供たちに任せます。学校の休み時間における子供たちの活動などを、例として挙げることができます。  

 最後はフリー・プレイ、つまり、子供たちが自らルールを考え、それを運用し、問題が起これば自分たちで解決方法を模索するケースです。 

 上記のいずれもが、ルールに基づいてプレイすることができるようになるために重要です。自分勝手ばかりでは通用しない、ちょっと大きな社会のルールのなかでプレイすることで得る学びが、健全な習慣を育み、その後の人生を支えます。

 クロススポーツクラブのスクールでも考えさせる事を重視します。何でも聞いて解決するのではなく、自分の意見を持って質問する。そしてやってみる。自分の意思を持つ事で気づく事の多さは、答えだけを知る事よりも多くの事を学べます。

“大人の役割とは?”

 青少年のスポーツおよびフィットネスに関しては、次に挙げる点を満たすように心がけましょう!

健康と健全性に焦点を当てた、長期的な取り組みを行い、個々のレベルに合わせ、「フィジカル・リテラシー」を高めることを目標とし、コンフォートゾーン(=本人が心理的に心地よいと感じること)のやや外側に焦点を当てた運動が適切です。抵抗トレーニングと技術の向上は、子供にとっても大人にとっても重要です。3段階の種類の異なるプレイをバランスよく、子供たちに促し、子供たちの成長のあらゆる段階においても積極的に関わりを持ち、良い見本を示すようにしましょう。

 子供の成長というのは多くの大人が関わって成り立つもの。私たちクロススポーツクラブの指導者はその一部だという事を自覚して日々関わっています。

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